ポストコンサルの転職事例

ポストコンサルのキャリアは多岐にわたりますが、「なんとなく」や「誘われたから」で選んでしまうと、あとから迷いや後悔につながることがあります。
重要なのは、自分自身の価値観や将来像と向き合い、「なぜその道を選ぶのか」を明確にすることです。実際にポストコンサルを歩んだ方々のキャリアには、その人なりの意思と背景が込められています。
この記事では、私がご支援してきた方々の転職事例をもとに、彼らがどのような思考のもとで次のキャリアを選び、どんな環境で活躍しているのかをご紹介します。
同じ「戦略コンサル」「業務コンサル」「ITコンサル」というバックグラウンドを持ちながらも、その選択は実に多様です。そこには「事業を創りたい」「現場に入り込みたい」「今までの知見を活かしながら新しい挑戦をしたい」といった想いがありました。
もちろん、ファーム内でキャリアを継続するのも一つの選択肢ですが、本稿ではファームの外に飛び出し、自らの軸で新たな一歩を踏み出した方々の「リアル」に焦点を当てています。
ポストコンサルという言葉に興味を持ち始めた方、もしくはその先を見据えて模索している方にとって、自分の選択肢を考えるヒントとなれば幸いです。
「ポストコンサルの考え方」についても記事にしていますので、こちらをお読みでない方は先にお読みいただけますと幸いです。
ケース1:戦略コンサルタントからスタートアップ
一人目は、新卒で総合系コンサルティングファームに入社し、戦略領域のプロジェクトを中心に5年間従事した後、スタートアップの経営企画室へ転職された方です。
転職の理由は、より事業の「中」に入り、戦略だけでなく実行責任も持ちたいという強い想いでした。大手事業会社も検討していましたが、最終的にスタートアップを選ばれたのは、意思決定と実行の距離が近く、事業づくりに裁量を持てる環境に魅力を感じたからです。
一時的に年収は下がりましたが、創業メンバーやボードメンバーと日常的にディスカッションしながら、戦略立案から実行、社内オペレーションの最適化、さらにはナレッジの全社展開や若手の育成にも関わっています。ファームでの経験を総動員して「経営の一翼を担う」手触りのある環境に、大きなやりがいを感じていらっしゃいます。
現在は、経営陣に近い立場で事業を俯瞰しながら、将来的には執行役員などの経営ポジションを目指し、現場と経営の両軸を理解できる人材へとキャリアを築いていこうとされています。
ケース2:戦略・業務コンサルタントから大手事業会社
二人目は、新卒で外資系SIerに入社した後、総合系コンサルティングファームに転職し、ITのPMOからキャリアをスタート。途中で戦略案件に関わる機会を掴み、戦略と業務の両領域を計5年間経験された方です。
転職にあたっては、別のファームへの移籍も検討していましたが、最終的には「自分の手で事業を立ち上げる経験がしたい」という想いから、大手事業会社の事業企画部門へ転職することを選ばれました。
その事業会社は、一定のブランドと安定性を持ちつつも、新規事業への投資に積極的な企業でした。ご本人は、スタートアップのような“ゼロからの挑戦”ではなく、ある程度のリソースや組織基盤を活かしながら、スケールのある事業をつくりたいという志向をお持ちだったため、そのバランスが大きな決め手になりました。
現在は、経営陣と近い距離で事業戦略やKPI設計に携わりつつ、自身がリードする新規事業の立ち上げも担当されています。今後は、外資系企業のカントリーマネージャーや、日本法人のGMといった経営ポジションを目指してキャリアを築いていきたいと考えておられます。
ケース3:総合系ファームから上場企業のコンサルティング事業立ち上げ
三人目は、総合系ファームで6年間、ITやDX関連の経営戦略や事業再編などのプロジェクトに携わった後、上場企業が新たに立ち上げたコンサルティング事業の創業メンバーとして転職された方です。
転職先は、もともとM&Aやファイナンス分野に強みを持つ企業で、クライアント企業への付加価値をさらに高めるべく、新たにコンサルティングサービスの立ち上げに踏み出すタイミングでした。
本人にとっては初めての“事業立ち上げ”でしたが、自らがファームでコンサルティングのデリバリーやセールスに携わってきた経験があったからこそ、プロジェクト設計から営業体制構築、サービス設計に至るまで、スムーズに設計・実行が進められたとのことです。
現在は、少数精鋭の立ち上げチームで、初期の案件獲得からデリバリーまで一気通貫で担当。事業化・組織化を見据え、今後はサービスラインの拡充やチームビルディングにも注力していく予定です。
最近は、事業会社のコンサルティング部門への参画も増えてきています。コンサルタントの方にとって、自分の専門性を活かしながら、事業を“創る側”に立ちたいという想いを実現しやすいキャリアパスです。
ケース4:ITコンサルタントから大手証券会社
四人目は、新卒でシンクタンクに入社後、10年以上にわたり公共・金融系のシステム構築や業務改革に携わり、その後、IT系コンサルティングファームに転職。金融領域を中心に経験を積んだのち、大手証券会社のDX推進室へ転職された方です。
このタイミングでDX推進室が新設され、外部出身者でありながらその立ち上げメンバーに選ばれたという経緯がありました。入社から1年足らずで室長に昇進し、現在はDXの全体戦略や予算策定、組織設計、システム子会社の再編など、社内横断の変革プロジェクトをリードしています。
シニアマネージャーでありながら転職で年収が上がった珍しいケースではありますが、上記のような能力を見込まれて、証券会社側から、この年収でもぜひ来てほしいとオファーをいただきました。
今後は現職でのCIO昇格を視野に入れつつ、将来的にはスタートアップのCIO・CDOといったポジションも見据えてキャリアを描かれています。
ケース5:戦略コンサルタントから地方で起業へ
五人目は、新卒で総合系ファームに入社後、戦略系のプロジェクトを中心に約3年間従事された方です。スピード感のある環境で経験を積みながらも、「自分自身の手で事業を動かしたい」「より地域に根差した形で価値提供をしたい」という想いが次第に強くなり、地元にUターン。自ら塾を立ち上げ、起業という新たな一歩を踏み出されました。
塾運営の傍らフリーランスのコンサルタントとしても活動し、企業の事業戦略やマーケティング支援をオンラインで行いながら、ワークライフバランスを保ちつつ多角的なキャリアを築いています。
事業の規模としてはまだ小さいものの、「自らの手で未来を創る」という実感、そして「地域社会に貢献している」という手応えに、これまでにない大きなやりがいを感じていらっしゃいます。
その他のケース
ここまで紹介した以外にも、ポストコンサルのキャリアは本当に多様です。ここでは簡単にいくつかの例をご紹介します。
たとえば、メガベンチャーに転職して安定性と裁量のバランスを取りつつ、次のステップとしてスタートアップに参画した方もいます。最初は既存のリソースを活かして事業開発に取り組み、その後、よりゼロイチに近い環境での挑戦を選ばれました。
また、SaaS系企業に転職し、IRやマーケティングなど複数業務を横断的に担うポジションを得た方もいます。コンサルタントとしての全体最適の視点やドキュメンテーション力が活かされており、業界に関わらず評価されるスキルであることを実感されているそうです。
さらには、マーケティング会社を経て、会計ファームを挟み、スタートアップでサービス立ち上げを主導している方もいます。中期経営計画の策定やIR対応など、フェーズの異なる経験を重ねながら、より経営に近いポジションへとステップアップしています。
このように、コンサル出身者には実に多様なキャリアパスが開けています。
だからこそ、自分の価値観や目指したい将来像を丁寧に見つめながら、一つひとつの選択肢を意味あるものにしていくことが大切です。
コンサルタントとして積み重ねてきた経験や視点は、業界や職種を越えて、多くのフィールドで求められています。
キャリア全般にいえることですが 「何が正解か」というものはありません。「自分の将来像や価値観にフィットする選択は何か」を考えることが大切です。
そして、どの道を選んだとしても、そこで自分の強みを活かし、次のフェーズをつくっていくことが大切です。この記事が、そんな一歩のヒントになれば幸いです。