「転職活動」と「転職」の手順

2022.05.15 キャリアのルールと考え方

今回は、転職活動の進め方とスケジュールについて書いていきます。

これまで、転職にあたってのベースとなる考え方に関する記事や、
具体的な転職先について記事を書かせていただきました。

キャリアは自由だからこそ厳しい

キャリアの前提と年齢ごとのルール

キャリアを会社の部門から考える

支援会社は「個の力」、事業会社は「組織力」

SIer出身者のキャリア戦略基礎

キャリア構築におけるコンサルタントのメリット

今回はそれらを踏まえて、より実践的な内容として、時間軸に基づいた転職活動の進め方とそのポイントをまとめていきたいと思います。

「転職活動」と「転職」を分けて考える

転職活動と転職の違い

まず転職や転職活動を考えるにあたって、私は、「転職活動」「転職」を分けて考えることをおすすめしています。

転職とは、職を変える意思決定と考えています。

それに対して、転職活動とは、意思決定の判断材料集めと捉えています。
例えば、リクナビやマイナビ、ビズリーチなどに登録すること、私のようなエージェントに相談をすること、「SIer 転職」とGoogle検索をすること、更には、実際に企業に応募し選考を受けることなどは、すべて意思決定の判断材料を集める行動です。

その上で、転職は慎重に行うべきだが、転職活動は積極的に行うべき、と私は考えています。

転職は、この先の数年、数十年を決める重要な意思決定であるとともに、不可逆的な要素を含むため、簡単に決めて良いものではもちろんありません。言い換えると、自分の人生の時間をどう投下するのかを決めることです。
しかし、切符(内定)を手にしていない状態では意思決定を行うことはできません。
そのため、切符を手にするために転職活動をやり抜くことがとても大切だと考えています。

また、転職活動は自分のキャリアを見つめ直す大きなチャンスでもあります。
転職活動をする中で、現職では自身の指す姿には近づけないと気がついたのならば、自分のキャリアの軌道修正、つまり転職をより真剣に検討していくことになります。
その一方で、現職でも近づけると結論が出た場合には、より現職に留まる覚悟が決まり、目の前の仕事により本気で向き合えるのでパフォーマンスが上がります。

このように、転職活動を通してキャリアを真剣に考えることは、いずれにしろとても有意義な時間になることと思います。
あえて転職活動を行うデメリットを挙げるとすれば、準備に時間と体力を割く必要があるということぐらいで、それ以外は特にありません。

私は、転職を支援するという立場ではありますが、結論がどうであろうと、その方にとってなりたい姿に近づく意思決定を応援したいと思っています。

転職活動の目的は、転職をすることではなく、自分のキャリアを真剣に考えることです。

「転職活動」の進め方

転職活動と転職の手順

転職準備

なりたい姿を描く

転職活動で最初に行うことは、なりたい姿を描くことです。

またそれと同時に、どうすればその姿に近づけるのか、言い換えると、自身の理想とする将来像に到達するまでのジャーニーを描き、逆算的に考えていくこともまた重要です。

一般的には、到達のために必要な経験やスキルは何か、いつどうやってそれを習得するのか、それを取りに行くためのアプローチとして「どの業界・企業・ポジション」が適切なのか、というブレイクダウンを行います。

SIer出身者のキャリア戦略基礎

企業選定

次に、なりたい姿をもとに企業選定を行います。

転職活動の大きな難点は、なりたい姿から逆算し、今取るべきアプローチショットが何か(すなわち行くべき企業がどこか)を考えることが非常に難しいことにあります。多くの求人を羅列して「どこに行きたいか」という意思決定を迫られても、情報の流布が十分になされない業界であることから、自分がどうなりたいのか、今取るべき選択肢が分からないと、多くの方が悩まれます。

ですから、キャリア形成への深い理解は勿論、業界や企業に対する深い知見を持った方とディスカッションベースで進めながら整理できると良いと思います。

また、逆算型の思考を行うと自ずと応募先はかなり絞られることが多く、自身が転職活動に掛けられる工数も鑑みると、応募先は3~4社(多くても5~6社)となることが多いです。

基本的な考え方や具体的な企業例は以下の記事からお読みください。

【転職体験談】NTTデータ出身者がコンサルティングファームを転職先として選んだ理由【エンドユーザーへの貢献にこだわりたい】

【転職体験談】富士通からコンサルへ「積み上げてきた知見に固執しない勇気」

【転職体験談】日立製作所からコンサルへ「最終的な決め手はパートナーを目指せるか」

書類(履歴書と職務経歴書)作成・スケジューリング

企業選定を行う過程で、履歴書と職務経歴書の2つの準備を進めていきます。大きなポイントは、「事実を端的に分かりやすく纏め上げる」という点にあります。

履歴書については、出身中学校から現職、資格、年収や配偶者等の基本情報を記入します。また、写真の撮り方(自撮りのようなものはNG)や服装を通して、TPOを弁えているか等もチェックされており、入社後も転職先に残るものになりますので、細かい部分にも気を配りながら嘘偽りなく記入しましょう。

職務経歴書については、今までの経験やスキルを定量またはファクトベースで記入し、応募先企業においてどのような活かし方ができるのかを意識して記載します。業界やポジションにより推し出すポイントは変わってくることが多いため、こちらも可能であれば応募先業界に詳しい方と一緒に創り上げることが望ましいかと思います。また、長すぎるアピールや自己PRはかえって逆効果となるため、あくまで事実を端的に、主語述語、誤字脱字、論理構成に注意しながら作成することをお勧めします。

更には、この段階から内定までは2~3か月程度かかること、内定から入社までは3か月程度かかることを見越したスケジューリングを行う必要があります。予めいつ転職したいのか、そのためにいつまでに内定を勝ち取るのか、そのために準備をどの程度のスピード感で進めていく必要があるのか等を把握しておきましょう。

WEBテスト

WEBテストの準備は、新卒就活時代のテスト受験等から少なくとも数年以上は空いているケースが多いと思いますので、余裕を持って対策本を2~3周程度行えるくらいは時間的余裕を確保することをお勧めします。故に、アプライ(応募)前の時期から準備することが大切です。

また、応募企業毎に採用しているテスト形式が異なりますので、応募企業のテスト形式からどの形式の対策を進めていくかを考えることもまた重要です。(テスト事情に詳しい方のアドバイスを聞きながら進められると非常に有意義な準備になるかと思います。)

転職軸・志望動機整理・企業研究

面接の準備の取り掛かりとして、「転職軸や志望動機などの棚卸」を行います。過去から現在、将来の意思決定に関してのロジックエラーが無く、誰がどう見ても納得するストーリーを構築することが重要です。

また、応募先の業界への志望理由や、各企業への志望動機も併せて検討します。重要なのは、その業界や企業でなければならない明確な理由(特徴)に言及し、更にはなぜそれが自身にとって良いのかという転職軸とのオーバーラップをさせられるかどうかです。

そのために、入念な企業理解のためのインプットが必要ですが、深い企業理解がある方等から情報を教えてもらうと進めやすくなると思います。

模擬・ケース対策

入念なインプットと整理の後は、必ずアウトプットの練習を行う必要があります。双方使う脳が異なるため、どちらも鍛え上げることが重要です。

模擬対策では、整理した話の内容に加えて、対面面接では挨拶から髪型服装、Web面接ではカメラの角度や照明等、見た目や話し方等の印象面もつぶさに確認し、必要に応じて修正を行います。

ケース対策では、直近では課題解決型のビジネスケースが多く出題される傾向にありますが、問題が多種多様であるが故に全ての問題の練習をすることは現実的でなく、どの問題でも応用できるフレームワークを身体に叩き込むことが合格までの第一歩です。

書籍等も一定の参考にはなりますが、いずれにしても、採用企業目線を持った方に複数回見てもらいながらFB内容を1つずつ改善し、確実に面接を突破できるクオリティに仕上げていけるかどうかが勝負の分かれ目となります。

アプライ(応募)

いよいよ応募となりますが、このタイミングでは書類作成段階で行ったスケジューリングと、実際の準備に要した期間のズレが無いか確認しておきましょう。少し予定よりも遅延している場合は、予めテスト受験から面接の日程調整を工夫することで、多少遅れを取り戻せる可能性があります。

また、各企業の応募時期は内定が出るタイミングを揃えて進める必要があります。一般的に内定後の承諾期限は1週間程度です。スケジューリングを怠ったが故に第一志望の内定が出る前に第二志望に行くか辞退するかを迫られるという状況も起こり得ますので、各社の選考フロー等の情報を明確に把握されている方とコミュニケーションを取りながら応募を進めていきましょう。

選考

選考では、これまでの準備を出し切っていただくことになりますが、どのような逆質問を行うのかという細部への拘りや、選考を経てのFBをモノにできるかどうかも重要です。

逆質問では、「文化マッチング」や「想定アサインプロジェクト」等をクリアにしつつ、自身が不安な観点を仮説ベースで聞くこと等で、不安解消は勿論、面接官からの好印象に繋がることもあります。

選考後のFBは、エージェント経由であれば、企業側とのリレーションが深ければ深いほど詳細に伝達され、合格のための改善点を教えてもらうことができます。それを次回選考までの間に修正することが出来るかが内定を勝ち取れるかの急所です。

スケジューリング

また選考期間中も、こまめにスケジューリングが必要です。
アプライのときと同じように、内定のタイミングを揃えられるように、面接日程を組んでいきます。
例えばコンサルティングファームであれば、グローバル承認が必要なファームもあるため、そのような事情も考慮が必要です。

内定

内定が出てから承諾までの期間は1週間程度とみてください。
その間に、現職にとどまった場合のキャリアと、転職をした場合のキャリアのどちらが、より自分のなりたい姿に近づけるかを比較します。複数内定を得ていれば、どの企業がもっとも良いかも考えていきます。
選考を受ける中で、キャリアプランもブラッシュアップされていると思いますので、もう一度キャリアを見つめ直していただきたいです。
また、年収とタイトル(職位)も比較軸に入ってくるかと思います。このとき、目先ではなくその先を見るようにしてください。例えば、転職時にはA社の方が待遇が良いが、5年後にはB社の方が良くなっているということもあります。
これらを踏まえて、意思を固めていきます。                                                             

「転職」の進め方

内定承諾(意思決定)

企業(エージェント経由の場合には担当エージェント)に内定を承諾する旨を伝えます。お断りをする企業にも、感謝の気持ちを添えて丁寧に連絡をします。
配属面談など、内定後に面談がある場合もあります。そこで評価を落とすと入社後まで響く場合がありますので、気を抜かないようにしてください。

志望動機は”過去” “現在” “未来” に軸を通す

退職交渉

退職を会社に伝えてから実際に退職するまでの期間は、3か月程度を見ておいてください。
そのうち、退職交渉は長い人では1か月程度かかる場合もあります。
退職の旨を伝える相手は通常は直属の上司です。
もちろん、引き止められることもあります。引き止められるということは、その必要とされているということですので、素直に嬉しいことではありますが、自身のキャリアにとってどちらが良いのかを判断していただきたいと思います。

引き止めの際、カウンターオファー(現職に留まれば、よりよい待遇にしますという約束)がでることもしばしばあります。しかし、カウンターオファーはその場限りの場合が多いです。例えば、部署移動が実現したとしても、数年後に元の部署に戻ることもありますし、昇進が実現したとしても、その後の昇進が保障されるというわけではありません。

また、内定承諾を辞退した企業のみならず、選考をうけた企業は数年間はアプライができなくなることも考慮した上で判断をしてください。

引継ぎ・有給消化

引継ぎは、状況によって様々ですが、短くても1か月程度は必要な場合が多いと思います。
それ以上かかってしまうこともありますので、退職交渉と並行して少しずつ引き継ぎマニュアル等を作ることをおすすめします。

引継ぎ後は有給消化が始まります。新しい業務に向けて予備知識やスキルを身に着けることもある程度必要ですが、新しい会社に万全な状態で臨むために心身ともにしっかりリフレッシュしていただきたいと思っています。
特に、家族との時間を大切にしてほしい、と個人的には思っています。転職直後は慣れない業務も多く、しばらく家族のために時間をとれなくなるかもしれません。また、転職には家族のバックアップが欠かせないと私は考えています。
まとまった時間をとれる機会は人生においてもなかなかないため、是非この機会に家族に感謝の意を伝えていただければ私としても嬉しいです。

今回の内容は以上ですが、詳しい説明が必要な箇所は別の記事で深堀をしていきたいと思います。
転職活動の一連の流れを把握してしっかりと準備を行い、なりたい姿へ近づいていく選択肢を多くの方が取れることを願っています。
ただ、どうしても転職市場の詳しい知識が必要となる部分もありますので信頼できるエージェントの方への相談や自身が進んで行きたい業界のことを知っている方からのお話を参考にして、最良の意思決定をしていただければ幸いです。

この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。

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